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大偶俊平美術館 「作刀実演」
 

大偶俊平(おおすみとしひら 1932−2009)は群馬県太田市出身の刀匠で人間国宝(1997年指定)。仕事場のあった自宅を改装し、彼が作刀した太刀などを展示する市立美術館になっている。
先ごろ、刀匠の生前のままに残されている仕事場で、お弟子さん(高野、本田の両刀匠)による作刀実演があった。

作刀の作業は鉄を鍛え始めて、約2週間で刀の姿になるそうだが、今回は心鉄(しんがね:刀の芯になり、炭素含有量が多いので柔らかく、刀が折れにくくする)と皮鉄(かわがね:刀の表面になり、炭素量が少ないので堅く鋭い刃になる)をそれぞれの素材になるように、何度も熱しては打って鍛え、心鉄に皮鉄をU字型に曲げて組み合わせる行程を見せてもらった。

そこまでの行程で長さが十数センチくらいの分厚い塊なのだが、これを打ち伸ばし2尺3寸の標準の日本刀の形になるというのが、なんとも不思議でならない。むしろ、そちらの作業を見てみたいと思った。

実演を見るために訪れた人が多く、私は美術館の駐車場に停めることができなかった。だいぶ遠くから歩いたので、仕事場の窓の外(よく見えるように、2箇所の窓や出入り口の戸は外されている)は見学者で一杯だった。最初は前の人たちの隙間や背伸びして見ていたのだが、途中で前後の交代があり、後半は前の方でしっかり見ることができた。それでも2時間あまり立ちっぱなしだったので、歩くともつれてしまうほど疲れた^^;

私が立っていた場所はその前に腰掛けている人たちがいて、鍛造の作業している所とは6,7mは離れていただろう。だが、1度火花が私のいるところまで飛んで来たことがあった。後で気付いたのだが、フリースの上着に2mmほどの小さな穴があいていた。
美術館内に刀匠のツギハギだらけでボロのような作業着(上着と袴)が展示してあるが、こうなるというのも頷けるというものだ。

モーターで動かす鍛造機(画像左の機械)が、電源の故障で動かないというハプニングがあり、若い本田刀匠が向こう槌で行うことになった。大きな鉄製の槌(金槌のバケモノみたいな大きさ)を振り挙げて打つという、昔ながらの伝統の鍛造法だ。
これは息が切れるほどの重労働(1度の向こう槌で、おおよそ26,7回は打ち下ろす)だが、現在では珍しくなったという作業が見られ、なんだか儲けたように思った^^;

ちなみに、日本には作刀の免許を受けている者は300人ほどいるそうで、そのうち100人位が刀鍛冶にたずさわっているという。しかし、その中でも作刀で生活出来るのは、ほんの一握りの刀匠に限られているらしい。

大偶師の弟子の内、作刀の免許を取れた者は5人。かなり辛い修行だから途中でやめてしまう者も多かったようだ。しかも、独立しても収入不安定な職業環境では、日本の伝統文化を担う若者も、先行きに不安を持つだろう。

作刀1本の鍛造には、高価な松の木の炭を30俵も使うそうだ。しかも松喰い虫の被害で、松そのものが少なくなっている。それで、刀匠の中には、昔ながらのフイゴと炭ではなく、ガスを使うことも試みられているというが、伝統技術に根ざしている作刀鍛冶には、やはり炭の方が良いらしい。

また、作刀作業がすべて成功するわけではなく、人間国宝の大偶刀匠でさえも6割位だという。だから、日本刀が美術工芸品とはいえ、1本のお値段が何百万あるいは何千万(?)かしても、ある意味当然なのだ。
このくらいの出費など屁とも思わないお金持ちはたくさんいるだろう。1本とは言わず10本でも20本でも購入し、若い刀匠たちを応援して欲しいものだ。
author:u-junpei, category:博物館・美術館, 19:19
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