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読評 「宗教消滅」(島田浩巳 著)

 

書店内をぶらぶらしていたら、「300円OFF」のシールが貼られた新書が積まれてあった。古書店ならともかく、新刊が値引きされているなんて! と思って手にした。

 

著者の島田裕巳は宗教学者で、多くの書物を出していることは知っていた。暮れに、富岡八幡宮での凄惨な事件があったが、彼が専門家としてコメントをしているのをTVで見た。その時に初めて、ご本人のお顔を認識した。

コメントはこの八幡宮と神社本庁との関係を質問されてのものだったが、なんだか歯切れが悪い印象があった。だから、300円引きというシールが目に入らなかったら、「資本主義は宗教と心中する」という副題にも興味を持たなかったろう。

 

この本の内容も首を傾げざるをえなかった。そもそも宗教は人類と歩みを共にしてきたのだから、それが「消滅」するとは、人類が消滅する場合だろう。したがって、宗教や宗教団体の盛衰が、当時の政治や経済体制に影響されるにしても、「資本主義は宗教と心中する」という彼のモチーフは理解できなかった。

 

世界的には欧米をはじめとしてキリスト教の衰え傾向があり、日本においても、仏教や神道の旧宗教だけでなく、創価学会をはじめPLや立正佼成会など戦後大成長してきた巨大な新宗教団体が、軒並み衰退傾向にあるとする。彼はこれを資本主義の行き詰まりとリンクしている現象だと分析する。

だが、著者も認めているように、イスラム教は実際には増加しているのだから、世界的傾向と経済資本主義との関連は、もっと緻密な検討がなされるべきだろう。

 

また、この本で著者の指摘するところをみると、在来の宗教団体信者数の減少傾向は、少子高齢化に伴った信者の高齢化であるとしているのだから、それと資本主義が高度に発展すると「宗教と心中する」とは牽強付会の印象を受けた。

 

読み終わり、改めて本の帯にある”創価学会でさえ信者激減!?”というコピーを見た。上の画像がそれだが、”でさえ”の文字に気付かないほど、活字を小さくしていている。これは売りたいが為のコピーだろうが、あまりにも宣伝臭がし悪意さえ感じる。

 

この点については、第1章の「宗教の未来を予見するの重要なセオリー」で、特に創価学会を取り上げ、その項目のタイトルを『創価学会の手口』としている。この中で、この教団がなりふり構わぬ「折伏」で、宗勢の拡大ができたのは、戦後の若者の田舎からの集団就職や大都会に友人がいない孤独感にあったと分析する。

しかし、犯罪でもあるまいに、『手口』という表現を使う著者の見識を疑わざるをえない。この章の語り口を読んで、たぶん、著者は創価学会が嫌いなのだろうと思った。

 

それはともあれ、高度成長期が過ぎた資本主義社会は行き詰まり、すると新旧の各宗教団体も勢力が衰えるのだとする。この結論がこの本の眼目なのだろう。だが、日本の一流の宗教学者の分析力とは、この程度のものなのだろうか。

私はこれは説得力に欠けるが思う。最初に述べたように、人類が存在する以上、生老病死にかかわるテーマは常に存在する。数千年前、まさに釈迦がその問題意識を持ったように、宗教を信じる人々は常に存在し続けに違いない。経済体制と共に心中して、宗教が消滅するわけがない。

 

あえていえば、こうした現状分析は社会学の分野だろうし、著者が専門とする宗教学としては物足りなかった。

author:u-junpei, category:読評, 22:22
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