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読評 「山の霊異記」(安曇潤平 著)

 

図書館の新刊本の棚に、この本があった。この著者の本は初めてだが、名が私のペンネームと同じだったので、思わず手に取った。

それに、山の怪異譚は、幽霊話など怖いものみたさもあって、そう嫌いではない。

 

この「山の霊異記」は22の話が納められている。副題に「ケルンは語らず」とあるのは、その中の1話で、雪山でケルンの傍らで遭難死した男が、婚約者に渡そうとした指輪を、ケルンに隠し置いたのではないか・・・という話。男のザックの中に指輪の箱だけが残されていたからだ。

夏になって、追悼登山した婚約者はそう思い、ケルンをなでるようにして探すのだが見つからない。

 

その話の最後で著者は、男が死んだのは雪山だから、ケルンは雪の中に頭だけのぞかしていたのでは推理する。とすると、指輪は天辺のほうにあるかも・・・悲哀が込められた話になっている。

 

他には幽霊譚が多いが、怖いものもそうでないものもある。幽霊を見るのは男が多いのは、著者が男だからだろう。

 

男がテントで寝ようとしていると、絶世の美女が現れる。もちろん幽霊なのだが、交わりを持ってしまう。

男はその経験が忘れられず、それ以後何度も北アルプスの同じ場所でテント泊し、その女と会うようになる。男の友人は生気を吸われて死んでしまうからやめろと忠告するのだが・・・

どうやら、女のほうが、このごろ生気(?)を失いつつあるようで、実は心配しているのだと男は友人に話す。

「美人霊の憂鬱」という話だが、これには思わず噴出してしまった。

 

作者がどうやってネタを仕入れているか分かる話もある。

京都長岡京殺人事件がそれで、1979年にワラビ採りにきた主婦二人が山中で惨殺された。犯人が分からないまま1994年時効になった。私はネットで検索し、本当に起きた事件だと知った。

 

話では、2人の若い山ガールが、気味の悪い男にしつこく話しかけられる。ところが、その直ぐ後を登って行く著者は、なぜ彼女たちが急に早足になったのか分からない。山頂で著者は事情を聞き、下山を共にする。

 

この「悪い人」という話の最後に、事件のことを書いている。殺された主婦Aのポケットから、『オワレている たすけて下さい この男の人はわるい人です』と書かれた買い物レシートが出てきた。この走り書きも、検索して本当だと知ったときは、かなりゾッとした。

 

山の怪談や幽霊話は、私はある程度は信じている。幽霊の正体見たり枯れ尾花ということもあろうが、説明できない現象というのは実際にはあるのだ。

 

登山家の田部井淳子さんの話だが、前を行く先輩たちが、次々に誰かと挨拶をしている。ところが、彼女は誰と挨拶を交わしてるのか分からない。それで聞いてみると、さっきすれ違ったでしょうといわれた。彼女はすれ違っていない・・・

 

ちなみに、私も、山の経験といえば里山くらいで、霊感もないほうだが、不可思議な事(人)に遭遇した経験が何度かある。私一人で登っているので、遭遇した事実の証明ができないのだが・・・それって、いつまで経っても鮮明に覚えていて、始末がわるい。

author:u-junpei, category:読評, 23:59
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