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読評 「屋上のウインドノーツ」(額賀 澪 著)

 

何か読書の候補はないかと、読書用のメモ帳をめくっていたら、「屋上のウインドノーツ」の題名と作者名があった。読みたいと思った動機がなんであったかは、思い出せない。

地元図書館の資料検索をしたら、松本清張賞(第22回 2015年)を受賞している。たぶん、その関連だったのだろう。

 

図書館の案内には、『友達がひとりもいない県立高校へ入学した、引っ込み思案の少女・給前志音は、ワケありの部長・日向寺大志に誘われ、吹奏楽部に入部する。やがて厳しい練習の日々が始まって…。爽やかな風を感じる熱血部活小説。』とある。

 

松本清張といえば、私のイメージは社会派推理小説。当然、その名前を冠した文学賞なら、そうした分野の作品が対象だろうが…。なぜ、青春小説が選ばれているのか不思議に思いサイトを見ると、『ジャンルを問わず、良質の長編エンターテイメント小説』に与えることに改めていた。

ちなみに、公募の文学賞で、賞金額が500万円は他の文学賞に比べてかなり高い。この22回には、600編を越える応募があったようだが、その中での受賞となれば、けっこう期待が持てそうだ。

 

それに、吹奏楽の部活を描いたという事では、武田綾乃原作のアニメ「響け! ユーフォニアム」を見てるし、こうした青春物には抵抗がない。また、中学時代に吹奏楽部(ブラスバンド)にはちょっと特別な思い出もある。

まあ、私の孫の世代の主人公が、よう頑張っている、と思って読書を楽しもうと借りてきた。

 

物語は、主人公の給前志音の幼稚園での風景から始まる。自分を「おれ」と言うので、私はこの子は男の子だと思って読み進めたら女の子だった。物語の背景にある茨城県では、女でも「おれ」という風習が残っているという。給前(きゅうまえ)という姓も珍しいと思ったら、これもフツウにあるのだという。

 

だが、苗字はともかく、女の子が高校生になっても「おれ」というのは、私には抵抗がある。地方の風俗にしても、わざわざ彼女だけそういうのはヘンに思える。どんなイントネーションで言うのかもあろうが、作家の意図がわからない。

 

分からないといえば、題名の「ウインドノーツ」の意味がなんなのか、興味深く読み進めたのだが、説明となるようなことは最後までなかった。

気になるので検索したが、ネットでは取り上げていない。ということは、読者はごく当たり前に知っているのだろう。

 

2017年に文庫本が出ていて、その出版に際して、著者は『三年前の原稿は、見るに耐えないもの』で、これでよく松本清張賞になったものだとして、文庫本では特にもう一人の主人公である男子生徒・日向寺大志の口調や行動の結末を書き換えたという(旭屋書店インタビュー)。

 

文庫本出版のときに、改稿するというのが一般的にあるのかどうかは知らない。だが、著者があえてするならば、そこには作家の数年間の成長のあとが見られるわけで、興味を持った私は文庫本を取り寄せてみた。

 

 

文庫本の帯に、「この風の音が 君にもきこえるか?」とあり、「風の音」の上に小文字で「ウインドノーツ」と振ってある。

つまり、この小説の題名は『屋上の風の音』ということになる。おそらく、単行本の帯にも似たようなことが書かれていて、読者はそれを知っているから、当然ながら誰も疑問にあげていなかったのだろう。

 

私は図書館の本を借りたので、帯はなく、それを知りえなかったわけで、私だけが「ウインドノーツ」の知識不足だったわけではあるまい・・・と思う。

まあ、若い人が好みそうな表紙でもあるし、この場合、外国語で表したほうが、題名としてカッコいいかも知れない。

 

私の時代、吹奏楽部はブラスバンドと言っていた。それで調べてみると、ブラスでは金管楽器を意味して、木管楽器が入らない。それで、今は「wind ensamble」とか「wind orchestra」というらしい。

ノーツは「note」で音符や(楽器の)音を意味している。

つまり、作者の意図は知らないが、単純に「風の音」だけではなく、「吹奏楽」に掛け合わしたのだろうと思って合点した。

author:u-junpei, category:読評, 20:40
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