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読評 「すぐ死ぬんだから」(内館牧子 著)

 

すごいタイトルにひかれて借りようと思った。私もそうだが、いわば先のない高齢者の物語だろうと予想したが若干違っていた。

 

主人公の忍ハナは78歳。老人は歳相応にナチュラルではなく、オシャレや外見に気を配り、いかにもジジババに見える年寄り臭さを断固排除して生きるべきだという自論を実践している。

上の画像(表紙絵)のように、老人の特徴は、男も女も誰もがリュックを背負い、帽子をかぶっている、お決まりのジジババスタイルだという。

ハナはというと、下の画像(裏表紙絵)のようで、とても78歳には見えない。

 

 

1歳上の夫の岩蔵とは夫婦円満で、自他ともに素敵な夫婦だと認めている。岩蔵はハナにやかましくいわれて、外見(食べるものから着る物まで)をいわば強制されているのだが、日頃からハナと結婚して幸せだみたいな事を、臆面もなく言うような夫だった。

それというのも、夫婦して浮き沈みの激しかった自営の酒屋経営をきりもりし、人生の苦楽を共にしてきたからでもあった。今は長男に店を譲り、夫婦はマンションで悠々自適に暮らしている。

 

ここまでが第1章で、ハナの高校時代の同窓会に出席した時の様子などで描写されている。

ところが、第2章の最後で岩蔵が硬膜下血腫が原因で突然亡くなる。

 

この物語の本題は第3章からだ。岩蔵の自筆遺言書が見つかり、家庭裁判所で検認を受けると、認知していない息子がいるという、家族の誰もが思いもしなかった、晴天の霹靂のような事実が書かれていた。

2号というか妾というかはともかく、ハナには極秘に40年間も他所で続けらていた生活があったことが明らかになる。

そんな事実は、私だったら遺言書に残さず、秘密のままに墓場に持っていけばよいと思うが、岩蔵はそうしなかった。

 

まあ、それで『物語り』になるのであろうが、作家の前作である定年退職後の男を描いた「終わっ人」に比べると、不自然な展開で釈然としない。

今作は主人公が老女であるから、ハナの考え方も作家自身の投影なのかも知れないが、岩蔵のようにそんなバカなことするだろうかという気分が、第8章まである最後まで抜けなかった。

 

だが、高齢者がどのように日常を生きるべきかという視点でみると、大変参考になる作品ではあった。「終わった人」はドラマ化されたようだが、この「すぐ死ぬんだから」も映像になったら、小説とは違う面白さがあるかもしれない。

author:u-junpei, category:読評, 19:19
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