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読評 「地球の履歴書」(大河内直彦 著)

 

本を書店で購入するときには、面白そうかどうかは、たいていは本の帯を参考にする。

いわば、本の帯は初対面の第一印象と同じく、そこに書かれてるコピーの影響は大きい。だが、それに紹介者の顔写真まであると、出版社はその人の知名度を当て込んでるのかと興ざめしないでもない。

私は、最初、この顔写真は著者かと思った。学者にしてはやけに笑顔の印象がし、本の内容は大丈夫だろうかと思ったほどだ。この笑顔は商売人のそれだ。

 

私は、ライフネット生命会長兼CEOと肩書きされた出口冶明なる人物を知らないし、興味の対象にもない。書店で見たら、購入したかどうか分からない。この本を通販で購入したのは、結果として幸いだった。内容は大変興味深かった。

 

通販の時は、手にとって見られない分、コメントを参考にする。この本の場合も見た。

私はふつう評価の低い方が気になる。納得できる理由なら買わない。

この本には、低い評価に『思ったより専門的な記述で難解』で『期待したほどワクワクさせる内容ではなかった』とあった。

しかし、最新の科学で事柄を説明するのに、ある程度専門的な言及になるのは当然だろう。期待したほどでなかったというのは参考にならない。ワクワクするかどうかは好奇心レベルの問題であるからだ。

 

で、私が読んでどうだったかというと、専門分野の記述は無視できる程度だった。というか、無視する。そうしても、テーマの大勢に影響はない。

例えば、この本では触れられていないが、最近ブラックホールの撮影に成功したというニュースがあった。私の理解ではブラックホールは光も吸収してしまうのに、なぜ映像が撮れるのか分からない。だが、分からなくても興味深い。

 

この本では、「地球の履歴書」という視点から、8章にわたり我々が認知できる様々な地球の現象が、科学者の目から語られている。

8章の「地球からの手紙」では有馬温泉が取り上げられている。温泉は火山の近くにあるというのが常識だろうが、有馬温泉には付近に火山ない。

それなのに、90度を越える湯が1000年にも渡り噴出し続けているという。科学者魂をくすぐる「奇妙な例外」なのだそうだが、その説明にはなるほどと興味深いものがあった。

 

読者が興味を持つように説明を構築する。それは、著者が「まえがき」で取り上げた、夏目漱石の弟子で科学者であり文学者でもあった寺田虎彦の世界を、著者も追いかけたいということなのだろう。

科学者の目が捕らえたエッセイは、文学の香りもし、面白いものがあると思う。医者が小説世界を描くと、専門知識が生かされていのと同じだろう。

author:u-junpei, category:読評, 22:33
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