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読評 「傑作はまだ」(瀬尾まいこ 著)

 

前作の『そして、バトンは渡された』は義理の父親と娘の物語で、実母が亡くなった後、父親が3人も替わるという、実際にはありえないと思われる作品だった。

 

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それが、平成31年の本屋大賞に選ばれたのには、私には多少意外だった。今どきは、たいした問題提起もせず、肩もこらない軽めの小説がうけるのかとさえ思った。

 

それは、それとして、今回の作品は、実父と血のつながりがあるだけの息子との物語。結婚もせず母は私生児となる息子を産んだ。いわば成り行きで妊娠したようなわけで、父母双方に結婚の意志はない。父親は息子が成人するまで、約束した毎月10万円の養育費をきちんと送ってきたものの、そのほかは全く親子の交渉を持っていない。親として息子に会いたいとも思わなかったようだ。

母親の方も、毎月の「受け取りました」とだけ書かれた手紙に、息子の写真1枚同封するだけ。

だから、父親は息子に会った事もなく、その写真がどのような状況のものかの説明もないので、父親としての関心も湧かないできたようだ。

 

その息子が25歳になり、前ぶれもなく突然会いに来て、数週間同居する。物語はその間の親子のやり取りが中心になっている。

 

父親は小説家が生業なのだが、まるで世間とは没交渉で日常の生活感がない。たとえば、食事もサプリメントで栄養補給して済まし、書斎に閉じこもったままで運動なぞしている様子もない。いわば引きこもりのような生活をしているのだが、病気にもならないのが不思議だ。

これまでの25年間に、小説を30冊出していて、その印税の収入だけでも生活できるという。だが、隣近所はもちろん、世間とは関わりを持たない生活をしていて、良い小説が書けるはずがないと思うのだが、彼の生き様は私には理解不能だ。もちろん、母親の対応も意味不明で承知できない。

もっとも、物語の最後に、息子が会いに来た理由も明かされるのだが・・・

 

というわけで、この作品も、前作と同様に、現実にはありえないコトを書いた小説だと思った。だが、『事実は小説よりも奇なり』というから、もしかしたら、実際世間にはそういうこともアリなのだろうか。

それゆえ、この作品と姉妹作のような前作も本屋大賞になったのだとしたら、高齢者の仲間入りした私には、理解不能な時代になってきているのかも知れない。

author:u-junpei, category:-, 22:00
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