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読評 「交通誘導員ヨレヨレ日記」(柏耕一 著)

 

表紙に『当年73歳、本日も炎天下、朝っぱらから 現場に立ちます』とある。ちなみに、著者のプロフィールには

『1946年生まれ、出版社勤務後編集プロダクションを設立。出版編集・ライター業に従事していたが、ワケあって数年前から某警備会社に勤務。七三歳を迎える現在も交通誘導員として日々現場に立ちながら、本書のベストセラー化により、警備員卒業の日を夢見ている』そうだ。

『ワケあって』とあるが、その「ワケ」なるものは、家族構成を含めて本文に率直に書かれている。警備員をしているのは、この業界は人手不足で、かなりの高齢者でも採用されるからだそうだ。その辺のいきさつにも興味深いものがある。

ともあれ、私がこの本を読もうと思ったのは、私も高齢者の一員であることが一番の理由であった。

 

タイトルが「日記」とある。それで、著者が警備員として体験した「業務日記」でもあろうと見当つけてはいたが、その内容は私の予想を超えて、もっと興味深く面白かった。いわば警備員の仕事を通して経験した人間模様を描き、その観察眼や文章には、さすがに出版編集者である経歴が生かされている。

 

「日記」としたのは、「まえがき」に次のようにある。

『本書は正確には日記ではない。といって小説でもない。日記の体裁をとりいれた警備員のドキュメントであり、生活と意見である。全文27項目はテーマごとに分類している。読者に興味を持っていただくためであり、面白く読んでいただく工夫でもある』と。

 

著者によれば、警備員を扱ったノンフィクションはこれまでなかったという。ただし、この本は交通誘導警備員の仕事を書いているが、出版目的は著者の『生活と意見』なのだ。高齢者になってこそ得られる人生のいろいろがあるのだと思う。私自身はこの本を”ドキュメンタリーエッセイ”として読んだ。

 

付け加えるならば、著者=高齢者=ヨレヨレでは決してなかった。「ヨレヨレ日記」としたのは、多少の自虐が混じってのことだろう。

でも、私がこの仕事をしたら、トイレ事情ひとつをとっても、あっという間にヨレヨレになっているに違いない。

author:u-junpei, category:読評, 19:00
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