- 読評 「ハートで感じる英文法」(大西泰斗/ポール・マクベイ 著)
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2019.12.21 Saturday
「英語が話せる」という目的で勉強するなら、これまで学んだ英文法の丸暗記ではダメというのがこの本の趣旨となっている。
ネイティブが使う英語や英単語には、彼等の感覚が込められてあるのだから、まずはそれを掴まなければならないという主張だ。場面場面でネイティブが使う英語の感覚が分かるなら、中学や高校で学んだこれまでの英文法は、むしろ邪魔な知識だったとさえいえる・・・ということのようだ。
例えば、この本の最初の方で取り上げている
I like playing with my kids in the park.
I like to play with my kids in the park.
の違いについて、私が関わっている中学レベルでは、動名詞と不定詞の質感の違いなどには触れていない。どちらも「公園で遊ぶのが好き」と訳されて、高校受験ではそれで必要十分なのだ。
ところが、日本人が英語を話せないのは、ネイティブの感覚の違いが分からないから、あるいは分かる学習をしていないからで、この本のこだわりは、そうではないでしょうということだ。
それゆえ、willとbe going toにみられるような、ネイティブの「未来表現」の感覚や、Will you ~?をWould you ~?と「過去形」を使うと、なぜ丁寧な表現になるのかとかが理解されるべきで、それが分かれば従来の丸暗記文法はいらないということになる。
この本では、そういう言葉の背景にあるネイティブの感覚=こころを学ぶべきだとして、「ハートで感じる」というタイトルになっている。
本の帯に、”目からうろこ”の英文法とあるが、内容も文体も読者の興味をひくように書かれていて、私は文法本としてではなく、フツウに読書をしている感覚で読めておもしろかった。
ただし、文法は不要だといっても、中学・高校で学ぶ基本的・基礎的な文法知識は必要であろう。この本でも従来の英文法を前提に解説しているから、そういう知識のある者を相手にして書かれている。それゆえ、一通り学んだ高校生や大学生が読むと興味深いかも知れない。
さらに言えば、勉強に楽はない。日本人がネイティブスピーカーのような話者になるには、やはり、文法丸暗記と同じような努力が必要だと思った。
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