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読評 「三体」(劉慈欣 著)

 

ニュートンの万有引力で、天体力学の問題に「三体問題」というのがある。それを私はこの本を読んだ後に知った。もし、読む前にその知識があれば、このSF小説をもっと興味深く楽しめたに違いない。

もし、この問題を知らない読者は、この本を読む前に知っておいた方が、小説の内容がずっとよく理解できると思う。これはネットを検索するとたくさん出ている。

 

小説では、地球から4光年離れたケンタウルス座アルファ星系に、3つの恒星に影響を受ける惑星がある。3つの太陽が互いに影響しあってめぐっているワケだから、とんでもない現象が起きる。

この惑星ではすでに200の文明が興亡し、現在の高度な文明を築いている「三体星人」も、いつかは存亡の危機にある。この状況がこの物語の前提となっている。

 

地球には、三体星人の存在を知り、連絡を取ろうとする者がいる。彼らは地球三体協会を創るのだが、この物語が中国の文化大革命の酷い描写から始まっているように、人類の俗悪で救いようのない現状に失望する者たちは、高いレベルにある三体星人に、人類を委ねようと考えている。

 

三体星人は地球の存在を知ると、地球に移住のための侵略艦隊を派遣する。だが、地球に到達するには450年かかる。その間に、地球の文明が三体星人より発達してしまうかもしれない。

それを阻止するために、三体星人は地球に智子と呼ばれる陽子をぶつけた。三体星人によって作られたこの陽子は、三体星を覆うほど巨大なAIで、それを、第十一次元まで折りたたむ手順で、原子核を回る陽子の大きさにしたものだ。

智子は自由意志を持ち、地球の最先端科学装置に入り込み、実験結果を混乱せしめて、それにより科学の発展を阻害する役割を担っている。

 

三体協会は降臨派と救済派に分裂するが、侵略艦隊を派遣した三体星人からの最後のメッセージは、『おまえたちは虫けらだ』というものだった・・・

 

原作は三部作で、この「三体」は第一部ということになる。2019年12月の発刊だが、第二部、第三部はまだ日本語では刊行されていない。

中国では、三部作合わせて2100万部を売る大ベストセラーになっているという。オバマ大統領も熱心な愛読者だったそうだ。ちなみに、2015年に英語圏以外では初めて、ヒューゴー賞を受賞している。

 

私は、最初に書いたように、万有引力に「三体問題」があることを知らずに読んだ。そのためかも知れないが、いかにも白髪三千丈をいいそうな、中国人作家らしい大袈裟なSFだなあ、という印象で読んだ。

作家は第一部では大変な大風呂敷を広げていると思うのだが、地球人はどうなったのか、第二部・第三部でどのように収束させたのか、日本語の刊行が楽しみではある。

author:u-junpei, category:読評, 00:03
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